伊豫銘砥 / iyomeito
砥石山の神様
2025.05.15伊豫銘砥
伊豫銘砥の産地である砥部町では、砥石を造る人々のことを「造部 つくりべ」と呼びます
また、造部は危険な山仕事に従事するためか敬虔な山岳信仰であり、砥石山自体を御神体としております
そんな彼らが切り出す伊豫銘砥は、山という御神体の一部をいただいて造られているのです
現代の造部は私と師匠の二人だけになってしまいましたが、口伝や文献がたくさん残っています
坑道のことは鋪(しき)と呼んだこと
造部の鋪での作業を見ていた地元民が「身の毛もよたてり」と畏れていたこと
どこの場所に、何人生き埋めになっているかということ
崩落事故があったときには1週間もうめき声が聞こえていたこと
クロンボやアリノキなど山の場所に名前をつけていたこと
砥石の呼称やそれぞれの価値の違いなどいろいろなこと
私たち造部は、山への感謝、先人への感謝、生きている自分への感謝という3つの心を大切にしながら伊豫銘砥を造っております
大自然の中での生に触れるたび、死に触れるたび、自分という存在のちいささや「時間」という永遠に思えるものの儚さに気付かされます
今朝の「おはよう」は、昨日の「おはよう」よりも一歩、明日の「おはよう」はさらに一歩、「死」に近づいているという事実を、日常の一刹那の大切さを
伊豫銘砥は「中今」という言葉を胸に、ひとつひとつ感謝を込めて造られた
大自然の悠久の営みを封じ込めた神様の宿った砥石なのです