伊豫銘砥 / iyomeito
研磨について考える
2025.05.12伊豫銘砥
〜石を通して心を研ぐ〜
伊豫銘砥のつながりや歴史を考えたときに、「研ぎ」という行為を単なる道具の手入れとしては捉えませんでした
刃物を磨くということは、心を磨くということ
石を撫で、水をかけ、刃物を合わす ーーー 集中する
鋼と、石と、静けさと、重なり合うその瞬間
悠久に触れ、人は己の内に深く沈み、無に近づいていきます
伊豫銘砥は大地の恵み
その静謐な表情と、手のひらに伝わる冷たさは、私たちの心に語りかけてきます
〜石によって磨かれる〜
磨くということは、削ぎ落とすということ
研磨という行為は、今ある状態から少しずつ失ってゆくことです
刃物を研ぐとき、鋼と砥石は互いにすり減り、少しずつ小さくなっていきます
研磨という行為を通して、すべては有限であるということを教えてくれているように思えます
刃物を研ぐことで、少しずつ滅んでゆく無常の摂理を教えてくれているのです
そして、研磨することで、石がすり減り、鋼は削ぎ落とされ、刃物に切れ味を生み出す
研ぎ澄ますということは、何かを得る過程において、何かを失うという真理も垣間見えるのかもしれません